百万遍念佛会

 今から5年前の平成20年2月29日。石見教区浄土宗青年会では、この日から20日間かけて百万遍念佛会を行いました。百万遍念佛とは読んで字の如く、百万回お念佛をお称えさせていただくことです。

 ことの始まりは昭和60年秋。当時の青年会の諸師が浄土宗三祖良忠上人の750年御遠忌に合わせて報恩謝徳の為にこの法要を営みました。
 それから23年。この度は現会員である私たちが宗祖法然上人800年大遠忌のお待ち受けとして、再び百万遍念佛会を厳修する運びとなったのです。
 昭和60年の頃は会員数も20名前後でしたが、平成20年では9名でした。このような状況で、はたして20日間も継続することができるのかという不安を抱えながら、約1年をかけて計画を練り先の法要開催に至りました。

 毎日朝6時から開白法要を行い、午後6時まで結縁の御回向を勤めながら絶え間なくお念佛をお称えいたします。日に五万遍のお念佛をお称えしなければ20日間での満行はできません。会員が交代しながら一心にお念佛をお称えいたしました。
 初日の朝の気温はマイナス3度。その寒さにも関わらず参詣くださる檀信徒の皆さんの姿に励まされたことを鮮明に覚えています。本堂内で多くの随喜寺院の皆さんや檀信徒の皆さんと共にお念佛をお称えし続けた初日はあっという間に過ぎ去りました。それから毎日、その日の法要が終われば次のお寺様へ移動する生活を続け、ついに最終日を迎えました。

 最終日もいつもと変わらない朝を迎え、正午の成満(じょうまん)を目指しお念佛を称え始めます。参詣された檀信徒の中には遠方の為前日から宿泊され、成満の瞬間に立ち会おうとされた方もいらっしゃいました。20日間の中の半分くらい追っかけの様に参加してくださっていた方のお姿もありました。遠方よりわざわざ応援に駆け付けてくださる方もいらっしゃいました。他教区の浄土宗青年会からも御助力をいただきました。数えきれない程の方々からのお力添えをいただいての成満を実感するに十分すぎる堂内でした。九十九万九千九百九十遍までお念佛をお称えした後、その場にいたすべての方々と共に同称十念にて成満を迎えさせていただきました。その瞬間の心の高揚を忘れることはできません。

 今こうして思い返してみますと、あの瞬間がまさに「願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国(願わくはこの功徳を以て 平等に一切に施し 同じく菩提心を発(おこ)して 安楽国に往生せん)」だったと感じます。僧侶と檀信徒が共にお念佛をお称えする仲間となって、同じ場所、同じ時間、同じ想いを持ち、ひたすらに阿弥陀様のお名前を呼ばせていただく。その功徳を私自身だけでなく、その場に来ることのできなかった方々や、先にお別れをさせていただいた方々、ご縁をいただいたすべての方に分けさせていただき、一緒に阿弥陀様のお救いにすがらせていただこうとした瞬間だったと感じます。

 この全国浄土宗青年会ホームページの表紙にある「願共諸衆生(がんぐしょしゅじょう)」という一節の後に「往生安楽国」というお言葉が続きます。『願わくは諸々の衆生と共に安楽国に往生せん』となるのです。まさに大勢の方々と共にお念佛をお称えし、共に阿弥陀様におすがりをさせていただいたのが、この百万遍念佛会でした。あの時の思いを常に心に保ちながら、これからも多くの方々と共にお念佛をお称えさせていただきたいと考えています。

南無阿弥陀佛

2013年06月01日
石見教区浄土宗青年会 本田行信