いのり

 先日、3月11日の14時46分より、当山にて、東日本大震災の三回忌物故者慰霊法要を勤めさせていただきました。この法要は、岡山教区浄土宗青年会と倉敷仏教会との共催で、浄土宗、真言宗、日蓮宗、浄土真宗の計46名の僧侶による合同法要という珍しいかたちで行われました。

 それぞれの宗派がおよそ十五分ずつのお勤めをしていくなかで、当山のお檀家さんによるお参りもあれば、観光で倉敷に来られ、たまたまお寺の前を通りがかったお若い方たちも、お焼香をされ手を合わせてお参り下さいました。本当に尊い志による沢山のお参りをいただき、まことにありがたいことでありました。

 思いかえしますと、大震災が発生してからこの2年の間、我々は被災地や被災された方々に、どのようなことを行ってきたでしょうか。

 たしかに、義援金の托鉢募金や被災寺院への寄付などは行ってきました。又、全国浄土宗青年会の呼びかけもあり、岡山からは数名が被災寺院へ瓦礫などの片付けをお手伝いさせていただきました。しかしながら、車では十時間以上もかかります東北の被災地には、たびたび足を運んで復興のお手伝いをさせていただくことも出来ず、ただ一度きりのお手伝いとなりました。その点は、自分自身、本当に不甲斐ない思いでいっぱいであります。

 そうなりますと、遠く岡山の地から何が出来るのかと考えさせられます。

 やはり、浄土のみ教えのなかにある我々にとっては、阿弥陀如来さまにお頼み申すこと、阿弥陀如来さまに祈りを捧げることしか出来ないのではないでしょうか。
 「南無阿弥陀佛」とお称えするなかで、東日本大震災に対する様々な思いを込めて、阿弥陀如来さまにお頼み下さい。
 たとえば、大震災にてお亡くなりになられた方をどうぞお浄土へお迎え下さいませ、また、行方不明の方々をどうぞお救い下さいませ、そして、被災された方々がどうぞ安穏にお過ごしくださるようお護り下さいませという願いを込めて、それぞれがお念佛をお称え下さることで、その願いは、阿弥陀如来さまに届いていくのです。

 ありがたいことに、お寺の御本尊さまのみ前やお仏壇の前でなかろうとも、たとえどんなところにいても、お念佛を称えたならば、必ず阿弥陀如来さまは目の前でお聞き下さります。

 このことを法然上人さまのお言葉のなかには

  衆生、佛を礼すれば、佛、これを見たもう。
  衆生、佛を称うれば、佛、これを聞きたもう。
  衆生、佛を念ずれば、佛も、衆生を念じたもう。

とあり、私たちが拝もうと手を合わせ頭を下げたならば、阿弥陀如来さまはこれを見ていて下さるとあります。また、私たちが「南無阿弥陀佛」とお称えしたならば、阿弥陀如来さまはこれを聞いて下さるのです。さらに、私たちが阿弥陀如来さまを思えば、阿弥陀如来さまも思いかえして下さるとお諭し下さっています。
 
 阿弥陀如来さまは、「念佛を称える者を必ず極楽浄土に救いとる」というお誓いをおたて下さり、日夜、智慧の眼とお耳で私たちをご覧になっています。私たちがそれに気づかなくても、慈しみの御心をかけ続けて下さっています。まさに、お念佛をお称えすることで、阿弥陀如来さまの御心にかなう姿となって、阿弥陀如来さまと私たちの「身」と「口」と「心」が通じ合い、極楽浄土へとお救い下さるのです。

 何事か起きたとき、この愚かな私に一体なにができるのかわかりません。しかし、まずは阿弥陀如来さまに「南無阿弥陀佛」とお称えし祈りを捧げることが一番大切なことなのです。そして、このお念佛を通じて阿弥陀如来さまがお導き下さり、おのずと成すべき事が見えてくるのです。

合 掌

2013年04月16日
岡山教区浄土宗青年会 誓願寺 鴫谷真策