お浄土への約束

 あの東日本大震災から一年が過ぎ、もうすぐそこに二年目のあの日、三回忌が迫って来ております。

 自坊である仙台市若林区荒浜にある浄土寺は、仙台市では唯一全壊となった寺院であります。現在は宗門より頂戴しました義捐金にて、本堂があった場所に再度プレハブの本堂を建てて法務を執り行っております。しかし、その場所は仙台市の災害危険区域に指定されており、居住することが許可されず、将来的にはどこか別の場所に移転する方向で現在は検討しております。仙台市では瓦礫の撤去などの表面的な震災の後始末はほぼ終了し、順調に復興しているかに思われがちですが、被災したもの達にとってはまだまだこれから。移転先の土地をどこに取得するか、その資金はどのように工面するか、未だ当山では檀信徒共々、先の見えない将来に不安を抱えている状況にあります。

 しかしそんな不安の中、他に何もないところではありますが、我がプレハブの本堂には毎日数名ほど参拝の方がやって来られます。それは檀信徒であることは勿論のこと、遠く離れた地に移り住まわれた地元ゆかりの方もわざわざ足を運んで下さいます。そして手を合わせ、南無阿弥陀佛のお念佛をお称えするのです。その姿こそ、まさに先にお浄土へ旅立たれた家族や友人と「またお浄土で会いましょう」と契りを確かめる姿でありましょう。

 法然上人も次のような歌を残されております。

 うまれては、まずおもひ出ん、ふるさとに、ちぎりしとものふかきまことを

 阿弥陀様の本願によって西方極楽浄土に生まれた者は先ず「ふるさと」、つまりこの娑婆世界に残された親しい方々との固い契りを思い出すのだと示されております。その契りこそ、同じく阿弥陀様の西方極楽浄土への往生することであります。

 震災によってお浄土へ先立たれた方々は、この世に残された者達とのその約束を忘れてはいません。今この瞬間も、そしてこれからもずっとこの世を生きる我々が往生の素懐を遂げ、またお浄土で再会するまで見守っていて下さるのです。

 明日もまた誰か当山の本堂に参拝し、お念佛をお称えして先に旅立たれた方とのお浄土への約束を確認しに来られるでしょう。

 大丈夫。その約束は必ず守られます。

なぜならその約束は、阿弥陀様の本願によって間違いなく結ばれているのだから。

もうすぐ三回忌。大切な人と離れ離れになってしまった苦しみは、取りあえず一段落したことと思います。

これから我らが向かう所は復興であります。復興は前途多難であることは間違いありません。しかしお浄土から先に旅立たれた方々も我々を見守って下さります。必ずやお念佛をお称えしながら復興を遂げ、今この世に生きる残された我々がいよいよ極楽浄土に往生するとなった時、震災で先に往かれた方達と再会し、その約束は果たされるのです。

震災に限らずとも、皆様にも先立たれた際に大切な方とのお浄土での再会を誓われた方もおられるでしょう。今は娑婆と浄土の空間的隔たりこそあるものの、その心は本願、阿弥陀様が私達に約束した南無阿弥陀仏のお念佛をお称えする者は、必ずお浄土に生まれさせて頂けるというお誓いによって確実に繋がっています。

 先にお浄土に往かれた方も、今もお浄土から皆様を見守り、そしてまた再会できることを心待ちにしておられます。ですからお浄土へ往生する為のお念佛は怠ってはならないのです。

 どうぞ皆様もお浄土におられます方との「お浄土への約束」、極楽浄土での再会の約束を守る為にも、日々お念佛をお称えして参りましょう。

南無阿弥陀佛

2012年11月15日
仙台市若林区 浄土寺 中澤良宣