人間のみなさまへ

 仏教を学ぶ上で、避けて通れない言葉の1つに「六道輪廻(ろくどうりんね)」と言う言葉があります。六道とは上から天、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄のことで、輪廻とは、これらの世界を因果応報により、何度も何度も生まれ変わることを言います。

 この最上位の天(界)は、上から下まで二十八(一部の経典には二十七)の世界があると言われています。この天の世界に住む人(?)達を、天人とか天女と言いますが、天人には自由に空を飛ぶ等の 様々な神通力が備わり、快楽に満ち溢れた世界と言われ言います。

 その寿命は、下天でさえ五百歳といわれますが、「人の一生は下天の一日に過ぎない」と言う文献から考えますと、人の寿命(昔のインドの平均寿命)五十をかけ、さらにこれに三六五をかけた数字になります。およそ、九百万年という大変長い寿命になります。

 こんなに長い間、快楽に満ちた生活を送る天人ですが、その生涯の最期には天人五衰(てんにんのごすい)といわれる五つの兆候が表れます。着ていた衣が垢で汚れはじめ、頭上に咲いていた花が萎み、体が臭くなり、脇から汗が流れ出て、自分の戻るべき座に帰りたくなくなります。天人は悟りを開いておらず、人間と同じ衆生ですので、死を目前に迎えたこれらの兆候に大変苦しみます。この苦しみは地獄で受ける苦しみの十六倍といわれます(正法念経)。

 天人といえども最期にはこの五衰の苦しみから免れることは出来ないので、速やかに六道輪廻から解脱するべきなのです。解脱とは、この天界を含む六つの世界(他に人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄)を輪廻転生することから逃れ、不退転の世界である極楽浄土に往生することをいいます。

 苦しみ、迷いに満ちた六道から解脱する出口、即ち、阿弥陀様に「助けて」とお願いできる窓口があるのは、(薫發、直出等の説明はしませんが)この人の世だけです。皆様は前世に於いて何か善い行いをし、その楽果として人の身を受けました。そしてこの度、六道輪廻を解脱する方法である仏教と出会いました。更に、煩悩ありながらもでも良しとされる「お念仏」という良き縁にも巡り会いました。折角頂いたこのチャンスです。あとは、私たちが信心をおこすことが大切です。人知を超えた仏法の世界ですが、この度こそは、阿弥陀様のお浄土に往生させていただきましょう。


   うけがたき人身を受けて

   あひがたき本願にあひて

   おこしがたき道心を發して

   はなれがたき輪廻の里をはなれて 

   生まれがたき浄土に往生せんこと

   悦びの中の悦びなり

             (宗祖法然上人 一紙小消息より)


2012年07月22日
神奈川県 小田原市 光明寺 岩崎正伸