すばらしい人生を歩もう

全ての佛様のお勧め

 東日本大震災で我が子を亡くしたお母さんが、涙を流しながら次のように話されたのをテレビで拝見しました。

 『あの日から、色んな方に「子どもさんは天国に行って、そこから見守ってくれている」と励まされました。初めはそうであって欲しいと願うばかりでした。しかし段々不安になってきたのです。

 ・本当に子どもは天国に行っているのか?
 ・天国はいったいどこにあるのか?
 ・そこで子どもは何をしているのか?

 この疑問に答えてくれる人は誰一人いませんでした。もうこれ以上、いい加減な事は言わないで欲しいのです。慰めどころか、余計に不安になるのです。』

 ここでいう「天国」とはキリスト教で説かれる「天国」でもなければ、佛教で説かれる「天界」でもありません。日本人の宗教観は本当に曖昧で、それを「良し」としてきました。しかし曖昧な宗教観はかえって、人を悩ませ苦しめることになってしまうのです。
「悲しみ、傷つき、苦しんでいる方の生きていく力としての宗教でなければ、何の意味もないし、僧侶の存在価値もない」
 3人の子を持つ青年僧侶として、改めて真剣に考えることとなりました。

 もし私がこのお母さんや、同じような境遇に苦悩されている方から問われたら、佛教に順じて、次のような話をして差し上げたいと思います。

1.お子様のためにお念佛をお称えください。

 佛様のお示し下さる「極楽浄土」でお子様が佛様となるように願うことをお勧めします。「極楽浄土は西のはるか彼方にある」とお経に説かれています。
 亡くなったお子様のために南無阿弥陀佛とお称えすれば、阿弥陀様がお子様を探し出し、苦しみの全くない極楽浄土に必ず往生させて下さるのです。
 佛様がお救い下さるのですから、間違いないのです。
「阿弥陀様、どうか○○を極楽浄土にお助けください。南無阿弥陀佛・・・・」
とお称えするだけでいいのです。
 極楽浄土では、菩薩と成ったお子様が立派な佛様に成るまで阿弥陀様がご教導くださいます。

2.ご自身のためにお念佛をお称えください。

 先だったお子様の極楽往生は間違いありません。これからはお母さんご自身のためにお念佛を称えながら、この世を精一杯生き抜いて欲しいのです。
 命終えた後には、立派な菩薩と成られたお子様と極楽浄土で必ず再会できるのです。
 そのためには、
「阿弥陀様、どうかこの私を極楽浄土にお助け下さい。南無阿弥陀佛・・・・」
とお称えするだけでいいのです。

 極楽浄土では菩薩と成られたお子様が、お母様の称えるお念佛を心の底から悦んで下さっています。なぜなら「お念佛を称えれば極楽往生間違いなし」ということをお子様はよくご存じだからです。

3.廃悪修善(はいあくしゅぜん)を心掛けて生きる

 廃悪修善とは「悪いことをせぬように、善いことをするように」ということです。
 欲は出来るだけ抑え、腹も出来るだけ立てないよう、無駄な殺生も出来るだけしないように心掛けるのです。嘘や二枚舌、悪口も出来るだけ慎むように心掛けて生きるのです。もし守れなかったときには、素直に懺悔し、お念佛をお称えしましょう。
「阿弥陀様、どうかこんな私を極楽浄土にお助け下さい。南無阿弥陀佛・・・・」
そして次からはしないように心掛けるのです。

 また有縁・無縁の人が亡くなったとき、さらには人間以外の生き物が亡くなったときにも、お念佛回向をすることは大変素晴らしい「修善」です。

 お母様のことを見守っているお子様に悦んでもらえる生き方は、すばらしく尊い人生だと思います。胸を張って極楽浄土で再会できるよう、「廃悪修善」を心掛けて、精一杯生きていきましょう。

最後に
 「お念佛をお称えして生きること」と「廃悪修善を心掛けて生きること」は、全ての佛様がお勧めして下さる生き方です。

 この生き方を自らも心掛け、他人様にもお勧めして、共にこの世を精一杯生き抜き、佛様にも、極楽浄土にいる大切なあの方にも悦んで頂きたいものです。

南無阿弥陀佛

2012年04月22日
兵庫教区浄土宗青年会 宝地院 中川正業